ロングタームケア保険は必要なのか、それとも、お金の無駄か?
ロングタームケア(LTC)保険は、日本語に訳せば「長期介護保険」ですが、将来、老人ホーム、介護施設、長期療養施設に入ることになった場合の費用、また、自宅やアダルト・デイケア・センターで介護を受けることになった場合の費用をまかなう保険です。このような費用はかなり高額で、保険がないと、リタイアメントのための貯蓄を使い果たしてしまうことになるばかりか、不動産を売却したり、生命保険を解約して支払いに充てる高齢者も少なくありません。ナーシングホームや、アシステッドリビングなどの介護施設の費用はインフレを大きく上回る速度で高騰を続けており、現在、場所によってもかなり差がありますが、全米平均では、一年で$8万ドル前後、アシステッドリビングで、1年4万ドル前後です。平均寿命が延びていることと考え合わせると、ロングタームケア保険は、ファイナンシャルプランの一環として、かかせない重要な要素となってきています。
長期介護の費用は、普通の健康保険や、メディケア(高齢者用公的医療保険)、メディケアのサプリメンタル保険ではカバーされません。またほとんどの団体保険も、長期介護をカバーしません。そして、メディケイド(低所得者用の公的医療保険)を利用するためには、財産を、「貧困者レベル」まで使ってしまってからでないと、資格を得ることができません。さらに、財政の緊迫により、メディケイドの受給は厳しくなる一方であり、受給できたとしても、メディケイドで利用できる施設は限られているため、家族から遠く離れたナーシングホームの相部屋に入居することになり、尊厳を失った生活を強いられることになりかねません。
いったい人口の何%くらいの人が、一生のうち一回でも、長期介護を必要とすることになるのかを予想した統計は数多くありますが、だいたい、アメリカの総人口の60%は、一生のうちに何らかの長期介護が必要だろうという結果が出ています。また、長期介護施設への平均滞在期間は、3年ということです。
このような状況を考えると、誰でもLTC保険に加入するべきではないでしょうか?しかし、LTC保険を買っても、使うかもしれないし、使わないで全く無駄になるかもしれないのです。
介護が必要になる確立は、家が火事で焼ける可能性、深刻な自動車事故に巻き込まれる可能性よりはるかに高いのに、私たちは、住宅の火災保険や車両保険には必ず加入しても、介護保険となると考えてしまいます。保険というのは本来万が一に備えて、保険会社にリスクを肩代わりしてもらうものであり、掛け捨てになったら無駄になったのではなく、災いが起こらなくてラッキーだったと考えるべきなのですが、こと介護保険となると、どうもこの理論が成立しにくいのはなぜでしょうか。
ひとつには、ほとんどの人が介護保険加入を考えるようになるのは、60歳を過ぎてからだということがあります。介護保険は、若いうちに加入するほど保険料が安く、加入が10年遅れるごとに保険料は2倍になり、加入できる可能性は半分に減ると言われています。60歳を過ぎてから加入しようとすると、保険料は決して安くないので、そこで踏みとどまってしまいます。また、いざとなったら、娘や息子が面倒をみてくれるのではないかと、楽観的に考えている方もいるでしょう。しかし、身内が介護をすると、介護を提供する人のほうが精神的、肉体的に参ってしまったり、経済的に追い詰められることになるということを覚えておかなければなりません。
それでは、介護保険の購入について、収入と財産の内容により、低、中、高所得の3つのグループに分けて、論理的に検証してみたいとおもいます。
低所得のグループ: このグループは、総資産が少なく、定期収入も長期介護施設の費用に満たないので、メディケイドを利用できるレベルと考えられます。
メディケイドの資格を審査する時の「資産」とは、現金、株、ボンド、ミューチュアルファンド、キャッシュバリューのある生命保険、CD、ボート、貴金属、投資不動産などです。ほとんどの州では、このような資産の合計が$2千ドルを超えると、メディケイド受給資格はありません。配偶者は、夫婦の自宅に住み続けている限り(この配偶者を、「コミュニティースパウズ」と呼びます)、$19、020〜$95,100(州による)の財産を所有してもよいことになっています。そして、コミュニティースパウズは、夫婦の家と車1台の所有を許可されます。また、コミュニティースパウズの生活費として、州によりますが、毎月$1、461〜$2、378までの収入を得ることが許可されていますが、収入が州の限度額より多い場合は、差額を施設への支払いに充てることが義務ずけれれています。
このコミュニティースパウズの毎月の生活費が、メディケイドの限度額より多い場合は、低収入のグループであっても、LTC保険を買ったほうがよいのではないかと考えられます。下記は、The
United Senior's Health Cooperative が出している、LTC保険購入のガイドラインです。
- LTC保険の保険料が、月収の7%以内であること
- リタイアメント収入が、少なくとも、年$35,000あること
- 住居と車を除いて、少なくとも$75,000以上の財産があること
高所得のグループ: このグループは、夫婦の片方がナーシングホーム入っても、ナーシングホームなど長期介護施設の費用と、コミュニティースパウズの生活費を充分カバーできる収入があります。そして、長期介護施設の入院期間3年から5年分の費用を充分に支払える資産があります。この費用は、地域により差がありますが、一人につき、$25万ドルから$40万ドルです。しかしながら、このグループに属するひとの多くは、LTC費用で財産が減るのを避けるために、LTC保険を購入します。LTC保険に加入せずに、介護費用の全てを自己資金で賄っても貧困に陥る心配がないのは、貯蓄が少なくても$2ミリオンある場合だと言われています。
中所得グループ: このグループが、通常、最もLTC保険を必要とします。このグループは、メディケイド受給資格を得るには財産がありすぎますが、自己資金で長期介護費用を支払うだけの所得はありません。また、このグループが高所得グループと違う点は、長期介護が長引いた場合の出費をまかなえるだけの、蓄えがないということです。中所得層の人にとって、毎月$6、000ドルものLTC費用を支払うことは、貯蓄を使い果たし、コミュニティースパウズが生活に困窮することになる場合がほとんどです。もしあなたがこのグループに属する場合、真剣にLTC保険の購入を検討されることをお勧めします。LTC保険を持つことにより、病気になっても経済的独立を持ち続けることができますし、一生をかけて築いた財産を保護することができます。
LTC保険を購入する理由には、それぞれさまざまな理由があるでしょうが、最も多い理由として、下記のようなことがあげられます:
- LTC費用は、経済的にも、精神的にも大きな負担となる。このため、子供達が親のLTC保険料の支払いを援助する場合も多い
- LTC保険に加入していなかったことにより、介護をすることになった配偶者や子供が罪悪感を抱くことになる場合も多い
- LTC保険に加入していることは、心の平和をもたらす
- 不動産や貯蓄などの財産は世代から世代へ受け継がれるのが普通であり、財産を築いた人は、毎月の収入からLTC保険の保険料を支払うことにより、築いた財産を、政府にではなく、相続人に遺したいと思うものである
- 誰も将来介護が必要になるかどうか確実にはわからないが、配偶者、家族、友人にとって重荷になることは避けたいと思うのが普通である。また、政府の援助を受けることには抵抗があるという人も多い。
- メディケイドで提供される介護・医療は、個人で支払う場合よりも施設の選択肢が少なく、質が悪いと、多くの人が感じている。また、多くの人が、ウェルフェアは、財産を隠して受けるものではないと考えている。
LTC保険は、正しいファイナンシャルプランのひとつのツールとして、非常に重要な要素になってきています。もし、まだ加入されていないかたは、ファイナンシャル・プランナーと相談し、見積もりをとってみてください。そして見積もりをもらうときには、その保険会社の過去の保険料値上げの記録と経済的基盤、そのLTC保険でカバーされるものとされないもの、などを必ず確認されることをお勧めします。
LTC保険は以前、内容が複雑でわかりにくく、保険料も非常に高いというのが一般的でしたが、昨今ではこれが改善され、内容もシンプルでわかり易く、保険料も以前に比べて加入しやすい設定になってきました。
また最近では、貯蓄型の終身生命保険やアニュィティ(年金保険)に、LTC保険のベネフィットが含まれているプランがあります。このようなプランを選ばれますと、もし介護が必要なかった場合でも、払った保険料が掛け捨てには駄にならず、貯蓄にもなります。
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